Q&A 第2集 通読版(全27問)
このページはQ&A第2集(その2)の全27問を1ページで通読できる形にまとめたものです。各問の個票ページへのリンクは各問末尾に掲載しています。
Q1 医師・薬剤師の求めに応じて提供可能な未承認薬・適応外薬情報の範囲
(1)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
企業として本ガイドラインに適合し情報提供可能と判断した情報を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
その際、提供する情報は、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないとしているところであるが、治療ガイドラインや査読付き原著論文、FDA・EMAなど海外の行政機関が公表している審査報告書や副作用情報、海外の添付文書は、学会、海外の行政機関等により一定の評価が行われていることから、科学的・客観的根拠に基づき正確なものかどうかを判断する目安となり得る。
また、症例報告については、患者数が限られる症例等に関して情報を求められた場合等は、症例報告を恣意的に選択することなく、エビデンスが十分でないことを明確に伝えた上で、情報提供することも差し支えない。
なお、ネガティブな情報については、症例報告も含めて情報提供することが必要である。
特に留意すべき項目:(4)、(5)、(6)、(7)
So what(意味すること): 医師・薬剤師から求めがあれば、社内審査を経てガイドライン適合と判断した未承認・適応外情報を提供できる。治療ガイドライン・査読論文・FDA/EMAの審査報告書等が科学的根拠の目安となり、症例報告はエビデンスが限られることを明示した上で提供可能。ネガティブ情報も必ず含める。
So why(なぜそう定めるか): 未承認・適応外情報の一律禁止は医療現場の情報ニーズと相反するため、求めに応じた提供に限り許容しつつ、科学的正確性とネガティブ情報の開示で患者安全を担保する趣旨。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
第4の3は、医療現場で適応外使用が避けられない現実を踏まえ、企業が未承認・適応外情報を一律に提供できないとする硬直した解釈を緩和した規定である。ただし「医療関係者の求め」を必要条件とし、かつ科学的・客観的根拠に基づく正確な情報という質的要件を課すことで、販売促進活動との明確な線引きを図っている。治療ガイドライン・査読付き原著論文・FDA/EMAの審査報告書・海外添付文書が「科学的根拠の目安」として列挙されているのは、第三者機関による評価を経た資料に限って根拠性の判断基準を緩めるという趣旨であり、これらに該当しない社内文書はより厳格な審査が求められる。
典型的な場面としては、希少疾患や小児領域など国内承認例が少ない分野の専門医がFDAの審査報告書や海外ガイドラインに基づく情報を求めるケースが多い。また、腫瘍内科や神経内科では複数のレジメンが混在し、国内未承認の治療法が国際標準ガイドラインに掲載されている状況が頻繁に発生する。こうした場面で企業の医薬品情報担当者が科学的に信頼性の高い外部資料を提供することは、医師の自律的な治療判断を補助するものとして許容されている。
実務で最も誤りやすい点は「ネガティブ情報の扱い」である。有効性を支持するデータのみを選んで提供することは、症例報告であっても論文であっても、ガイドラインが禁じる「恣意的な選択」に当たる。具体的には、特定の用量での有効性を示した論文を提示しながら、同じ用量域で安全性懸念を報告した論文を省略するケースがこれに該当する。また、症例報告を提供する際は「エビデンスが十分でないこと」を口頭・書面で明確に伝えなければならず、エビデンスの限界を告げずに事実列挙するだけでは要件を満たさない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q1
Q2 国内未承認の海外効能・用法等に関する情報提供の範囲
(1)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から国内では承認されていない海外における効能・効果、用法・用量等に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A1と同様。
So what(意味すること): 国内未承認の海外効能・用法情報もQ1の回答と同じ条件が適用される。社内審査でガイドライン適合と判断した情報を、科学的根拠を示した上で、ネガティブ情報も含めて提供できる。
So why(なぜそう定めるか): 海外でのみ承認された情報であっても、国内の治療判断に役立つ可能性があるため、Q1と同一の安全基準のもとで提供を認める趣旨。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
国内と海外の薬事承認にはタイムラグが存在し、FDA・EMAで承認されているが日本では適応外という状況は、腫瘍内科・循環器内科・神経内科など多くの専門領域で日常的に発生する。医師はこうした海外承認情報を治療判断の参考にしたいと考えるが、企業の情報提供が一律に遮断されれば、医師は独自の文献検索に頼らざるを得ず、情報の質や解釈にばらつきが生じる。Q2はこうした実態を踏まえ、Q1と同じ枠組みの下で海外の効能・用法情報の提供を許容している。
実務での典型例は、海外では特定の疾患に対して一次治療として承認されているが日本では同じ適応の承認がない薬剤の情報を、担当専門医から求められるケースである。この場合、FDA・EMAの審査報告書や海外の添付文書を科学的根拠として提供できるが、提供にあたっては「国内では承認されていない」という事実を明示することが前提となる。提供する情報から国内未承認であることを読み取れない構成は不適切であり、たとえ海外審査報告書の写しであっても、国内の承認ステータスを別途明記する必要がある。
誤りやすい境界として、「海外承認情報だから公開情報であり提供制限はない」という解釈がある。海外で公開されている情報であっても、それを医師に積極的に持参して説明する行為は「求め」なしには認められない。また、海外では複数の効能が承認されているが国内では一部のみという場合、国内未承認の効能に関する資料を「参考まで」として添付する行為も、求めのない自発的提供として禁止される。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q2
Q3 再評価で承認取消になった効能・用法に関する情報提供
(1)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から再評価の結果、承認が取り消された効能・効果、用法・用量に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
再評価の結果、承認が取り消されたこと及び承認が取り消された理由について情報提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(6)
So what(意味すること): 「承認が取り消された」という事実と取消理由の情報は提供できる。ただし、取消済みの効能・用法を推奨するような情報提供は不可であり、安全性関連留意事項(6)への準拠が求められる。
So why(なぜそう定めるか): 再評価で安全性・有効性が否定された情報を医療現場が知ることは患者安全上必要であるが、否定された情報そのものの宣伝を避けるため、「取消の事実と理由」に限定している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
再評価制度は、既承認医薬品の有効性・安全性を最新の科学的基準に照らして再審査し、要件を満たさないと判断された場合に承認を取り消す仕組みである。再評価で承認取消となった効能・用法は、規制上「現在使用すべきでない」と判定されたことを意味する。医師がその事実を知らずに当該用途での処方を継続するリスクを防ぐため、取消の事実と理由についての情報提供は許容されており、これは安全性情報の共有という観点から積極的に求められる側面もある。
典型的な場面は、古くから使用されてきた薬剤の特定の適応について再評価で承認が取り消されたが、その事実が現場に浸透していない状況で当該用途での使用を検討している医師から問い合わせがあるケースである。この場合、企業担当者は「○○の効能については再評価の結果、承認が取り消されており、取消の理由は○○です」という情報提供が可能であり、かつ安全上必要でもある。
最も重要な境界線は、「取消の事実と理由」を伝えることと「取消後の効能についての情報を推薦的に提供すること」の区別である。たとえ「学術論文ではまだ一定の有効性が報告されている」という状況であっても、再評価で否定された効能に関する情報を積極的に情報提供することは禁じられる。取消の理由を説明するために否定された試験データを引用することは許容されるが、それを超えて「使えるかもしれない」という文脈で追加情報を提供することは不可である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q3
Q4 未承認薬・適応外薬の治験データの情報提供範囲
(1)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する治験データを求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A1と同様。
ただし、症例報告に関する部分は除く。
特に留意すべき項目:(4)、(5)、(6)
So what(意味すること): 治験データの提供はQ1と同じ条件で可能だが、症例報告はこの設問の対象外となる。治験データは試験条件・方法を明示して科学的根拠とともに提供する必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 治験データは症例報告と異なり対照試験等の手続きを経ているため一定の信頼性があるが、症例報告の条件(患者限定、エビデンス不足の明示)は治験データには適用不要とし、規定を整理している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
治験データはランダム化比較試験や用量漸増試験など、科学的手続きを経て収集された構造化データであり、症例報告とは質的に異なる。このため、Q1の「症例報告はエビデンスが十分でないことを明示して提供」という規定は治験データには適用されず、Q4はその部分を除外している。一方で、治験データについても恣意的な選択の禁止(留意事項(5))や安全性情報の省略禁止(留意事項(6))は同様に適用される。
典型的な場面は、承認申請中の新適応に関する治験中間報告を臨床試験参加施設の医師が求めるケース、または自社製品の効能追加に向けた医師主導治験データについて問い合わせを受けるケースである。この場合、JRCTやClinicalTrials.govに登録・公開されている情報であれば提供可能であり、社内の未公開解析データは対象外となる。
実務で誤りやすいのは、有望な中間解析データを提供し、その後の最終解析で主要評価項目が達成されなかったデータを提示しないことである。治験データの提供においても「ネガティブな情報の提供が必要」というQ1の原則は維持されており、特定の試験の良好な結果だけを抜粋して説明することは許されない。また、公開中の治験について「このデータはまだ内部の解析段階ですが」として社内情報を補足的に加えることも不可である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q4
Q5 添付文書に明記されていない小児等への投与に関する情報提供
(1)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から添付文書に明確に記載されていない小児等への投与に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A1と同様。
So what(意味すること): 小児等への投与情報(添付文書未記載)もQ1と同じ条件が適用される。科学的根拠に基づく情報であれば、社内審査を経て提供可能であり、ネガティブ情報の開示も必要。
So why(なぜそう定めるか): 小児等への未承認使用情報は臨床上のニーズが高い一方、証拠が限られることが多いため、Q1のエビデンス要件とネガティブ情報開示の枠組みを同様に適用して安全性を確保している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
日本では小児を対象とした臨床試験を義務付ける制度的枠組みが成人に比べて弱く、多くの薬剤で「小児への投与については有効性・安全性は確立していない」という記載のみで具体的な用量情報が添付文書に存在しない。それでも小児への投与が医学的に必要となる場面は多く、小児科・新生児科・小児腫瘍科では体重換算用量や年齢別投与量に関する情報を企業に求めるケースが頻繁に発生する。Q5はこうした現場ニーズに応え、Q1の枠組みを小児情報にも適用することを明確にしている。
典型的な場面は、成人適応で承認された薬剤の小児用量について海外の小児科学会ガイドラインや海外添付文書を根拠として提供を求められるケース、または自施設で蓄積した小児への投与経験を持つ医師から「企業側の安定性・安全性データはあるか」と問われるケースである。前者ではQ1同様に学術的評価を経た外部資料として提供できるが、後者の社内データは科学的根拠と試験条件を明示した形での提供が求められる。
誤りやすい点は、小児データが乏しいにもかかわらず「現在得られている情報を提供する」として、有効性に関する限られた症例報告のみを提示し、用量設定の根拠の弱さや安全性モニタリングの必要性を説明しないことである。また、「成人と同様の安全性プロファイルと思われる」という推測を加えることも禁じられる。添付文書に記載のない情報を提供する以上、エビデンスの限界を明確に伝える責任は企業側にある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q5
Q6 未承認薬・効能追加に関する開発状況(治験情報)の提供範囲
(2)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(開発関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から未承認薬や効能追加に関する開発の状況に関する情報(治験情報)を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
例えば、厚生労働省ホームページにおいて「国内での治験・臨床研究の情報」として紹介されているサイト(大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)、(一財)日本医薬情報センター(JAPIC)、(公社)日本医師会治験促進センター(JMACCT))の情報、臨床研究法に基づき公開されている医療機関等で実施される臨床研究(臨床研究実施計画・研究概要公開システム:JRCT)の情報、PMDAホームページで公開されている主たる治験及び人道的見地から実施される治験(拡大治験)の情報、ClinicalTrials.gov(https://www.clinicaltrials.gov/)の情報等を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(4)、(5)、(6)
So what(意味すること): 開発状況の情報として提供できるのは、UMIN・JAPIC・JMACCT・JRCT・PMDA・ClinicalTrials.gov など公的に公開されている治験・臨床研究情報に限られる。社内の未公開開発計画等を口頭で伝えることは想定されていない。
So why(なぜそう定めるか): 公的登録システムに掲載済みの情報は客観的に確認可能であるため、「科学的・客観的根拠に基づく正確な情報」という要件を満たしやすく、提供が認められる。一方、未公開社内情報は検証不能なため対象外。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
開発中の薬剤や効能追加に関する情報は、公的登録システムに開示された情報と未公表の社内開発情報が混在する特殊な領域である。医師が治験への患者紹介の可能性を探ったり、新たな治療選択肢の見通しを確認したりする目的で企業に問い合わせることは多い。ガイドラインが提供を認めるのはUMIN・JAPIC・JMACCT・JRCT・PMDA・ClinicalTrials.gov等に公開されている情報に限られ、「公開されているから説明できる」という客観性の担保を通じて科学的根拠要件を満たしている。
典型的な場面は、自社製品の適応追加申請に向けた第III相試験が進行中の段階で、その疾患を専門とする医師から「いつ頃使えるようになるか」「現在どの施設で行われているか」と問われるケースである。この場合、JRCTやClinicalTrials.govに登録されている試験の実施施設・試験デザイン・組み入れ基準などの情報をそのまま案内することは可能である。一方、「社内では2028年の申請を目標にしている」といった未公表の開発スケジュールを口頭で伝えることは許されない。
誤りやすい境界線は、「公開情報の補足説明」として社内情報を加えてしまうことである。たとえば、公開中の治験概要を紹介した後に「実はもうすぐ中間解析が出る予定です」と付け加えることは、公開されていない情報の開示に当たる。また、「PMDA審査中」という事実は公開情報に基づいて伝えることができるが、審査の進捗状況や審査機関とのやり取りの内容は内部情報であり提供できない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q6
Q7 承認外の品質情報(一包化安定性・配合変化等)の情報提供
(3)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(品質関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から一包化したときの裸錠での安定性、粉砕時の安定性、複数の医薬品を混合した場合の配合変化など、承認を受けていない品質に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
一包化したときの裸錠での安定性、粉砕時の安定性、複数の医薬品を混合した場合の配合変化など品質に関する社内資料を、企業として本ガイドラインに適合し情報提供可能と判断した上で、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
なお、情報提供にあたっては、試験条件、試験方法などを含めたデータを提供するなど、科学的・客観的根拠に基づき正確な情報を提供するよう留意することが必要である。
特に留意すべき項目:(4)、(7)
So what(意味すること): 一包化や粉砕、配合変化などの品質情報は社内資料であっても、ガイドライン適合の社内審査を経て、試験条件・方法を明示したデータとして提供できる。試験条件なしに結果だけ伝えることは不可。
So why(なぜそう定めるか): 調剤現場では添付文書に記載のない品質情報が頻繁に必要とされる。試験条件・方法を含むデータ開示を義務付けることで、医療現場が情報を適切に評価できる科学的透明性を担保している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
一包化・粉砕・配合変化といった調剤操作は医薬品の承認規格外の使用であり、製品によっては腸溶性コーティングや徐放機構が破壊されて吸収プロファイルが変化したり、有効成分が分解したりする可能性がある。添付文書に「粉砕不可」と記載されていない場合でも安全性を保証するものではなく、薬剤師が自施設での調剤可否を判断するために企業の試験データを必要とする場面は多い。Q7はこうした品質情報についても、社内資料であっても試験条件・方法を明示した形での提供を許容している。
典型的な場面は、介護施設や在宅医療での多剤一包化調剤において特定の薬剤の裸錠安定性データを薬剤師から求められるケース、または複数の薬剤を混合する際の配合変化の有無を確認したい調剤薬局からの問い合わせである。これらは通常、医薬品情報担当部門(MID)や学術部門が対応するが、試験が実施されていない組み合わせについては「データなし」と正直に回答することが求められ、「問題ないと思われる」という推測での回答は不可である。
最も誤りやすい点は、試験結果の「結論」だけを伝え、試験温度・湿度・保管条件・測定時点などの条件情報を省略することである。品質試験の結果は条件依存性が高く、たとえば25℃/60%RHでの安定性データを実際の使用環境(高温多湿の病室など)に外挿できるかどうかは医療関係者が判断すべき事項である。条件情報なしに結論のみを伝えることは、医療関係者が情報を適切に評価できる状態を作らず、科学的根拠に基づく正確な情報提供の要件を満たさない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q7
Q8 承認外の簡易懸濁法に関する情報提供
(3)情報提供可能な未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(品質関係の情報)
Q(質問)
医師又は薬剤師から承認を受けていない簡易懸濁法に関する情報を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
A7と同様。
So what(意味すること): 簡易懸濁法に関する未承認品質情報もQ7と同一の条件が適用される。社内審査を経てガイドライン適合と判断した上で、試験条件・方法を含むデータとして提供する。
So why(なぜそう定めるか): 簡易懸濁法は嚥下困難患者への投与で多用される手技であり、品質情報の必要性はQ7と同等であるため、同一の扱いとしている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
簡易懸濁法は錠剤やカプセルを温湯に溶解・懸濁させてシリンジで投与する方法であり、経鼻栄養チューブや胃瘻(PEG)を介した投与が必要な患者に広く用いられている。腸溶性製剤や徐放性製剤では懸濁により薬物動態が大幅に変化する可能性があり、これは承認規格外の使用に当たる。Q8はQ7と同一のカテゴリとして扱われ、社内の安定性・懸濁適否データを試験条件とともに提供することが許容されている。
典型的な場面は、嚥下機能が低下した高齢患者や意識障害患者に対する投与管理を行う病棟看護師・薬剤師からの問い合わせ、または在宅医療の場での経腸栄養患者の薬剤管理について問われるケースである。「懸濁後○分以内に投与」「温湯の温度は○℃」といった試験条件付きのデータを提供することで、医療関係者が現場の状況と照合して判断できる情報が提供される。
誤りやすいのは、「同種同効薬が懸濁法で使用されているから問題ない」という類推で回答することである。製剤形態や添加剤の違いにより懸濁後の挙動は異なるため、個別製品の試験データなしに類推で可否を判断することは科学的根拠要件を満たさない。また、試験結果として「懸濁可能」と記載された社内資料であっても、その資料を提供する前にガイドライン適合の社内審査を経ていることが前提条件となる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q8
Q9 頻出の適応外情報について回答書を事前作成しておくことの可否
(4)情報提供資料の事前作成
Q(質問)
医師又は薬剤師から頻度高く求められる適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報について、あらかじめ、適切な社内手続を経て本ガイドラインに適合する回答書を作成しておき、医師又は薬剤師から情報提供の求めがあった場合に、当該回答書を提供することは可能か。
A(厚生労働省の回答)
問の状況において、あらかじめ回答書を作成しておくことは差し支えないが、医療関係者からの求めに応じて回答書を提供するときには、回答書の内容が医療関係者の要求内容に沿ったものになっていることを確認することが必要である。
特に留意すべき項目:(2)、(3)
So what(意味すること): 頻出質問に対する回答書を事前に作成・承認しておくことは許容されるが、実際に使用する際は「その医師・薬剤師が求めた内容と回答書の内容が一致しているか」を必ず確認してから提供する必要がある。内容が合わない回答書を機械的に渡すことは不可。
So why(なぜそう定めるか): 事前作成自体はガイドラインに反しないが、未承認情報の提供は「医療関係者の個別の求め」に対応するものでなければならないため、提供時に内容の適合確認が必要とされている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
医薬品情報部門や学術部門は、頻繁に寄せられる適応外情報の問い合わせに対し、毎回ゼロから回答を組み立てることの非効率と品質のばらつきを避けるため、あらかじめ社内審査を経た標準回答書を準備することがある。Q9はこの実務上の合理性を認めつつ、使用時に「問い合わせ内容との適合確認」を義務付けることで、事前作成が「自発的提供の抜け道」にならないよう制度設計している。
典型的な運用として、特定の適応外使用について年間数十件の問い合わせが集中する場合に、専門委員会の審査を経た標準回答書を作成・管理し、実際の問い合わせを受けた際に担当者が回答書の内容を問い合わせ内容と照合してから提供するフローが想定される。この照合ステップを省いて「いつもの回答書です」と機械的に渡すことは、たとえ同じテーマの問い合わせであっても要件を満たさない。
実務で問題になりやすいのは、問い合わせ内容が回答書の想定範囲と微妙にずれているケースへの対応である。たとえば回答書が「成人の標準体重患者への用量」を対象としているのに、問い合わせが「腎機能低下患者への用量調整」についてであった場合、回答書の一部しか適合しない。この場合、適合しない部分を除いて提供するか、改めて適合する情報を別途準備する必要がある。回答書全体を渡して「必要な部分だけ参考に」とするのは不適切である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q9
Q10 治療ガイドラインに適応外情報が含まれる場合の提供可否
(5)他の目的で情報提供する資料に未承認薬・適応外薬等に関する使用情報が含まれる場合
Q(質問)
医師又は薬剤師から治療ガイドラインに関する情報を求められた場合で、治療ガイドラインにおいて推奨される治療方法に、適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報が含まれるときは、当該治療ガイドラインを提供することが可能か。
A(厚生労働省の回答)
当該治療ガイドラインに承認を受けていない効能・効果、用法・用量等に関する情報が含まれることを明確に伝え、当該治療ガイドラインを本ガイドラインの条件に従って提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(7)
So what(意味すること): 治療ガイドラインを丸ごと提供すること自体は可能だが、その中に国内未承認の効能・用法情報が含まれていることを事前に口頭または書面で明確に伝えることが必須条件。事後説明は不十分。
So why(なぜそう定めるか): 治療ガイドラインは医療の標準化に重要だが、含まれる未承認情報が無批判に使用されるリスクを防ぐため、含有している旨の事前告知を義務付けている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
治療ガイドラインは学会等が科学的エビデンスを体系化した権威ある文書であり、医師の処方判断の基盤となる。しかし国内未承認の薬剤や用法が「標準治療」として推奨されているケースは珍しくなく、ガイドライン全体を提供する際にその点が明示されなければ、医師が未承認内容を承認情報と誤認するリスクがある。Q10の「明確に伝える」要件は、この混同防止を目的としている。
典型的な場面は、特定疾患の専門医が最新の国際ガイドラインを求め、そのガイドラインに日本未承認の推奨レジメンが含まれているケースである。この場合、「このガイドラインのセクション○には国内未承認の効能・用法に関する推奨が含まれています」という形で提供前に明示することが求められる。提供後に「気づかなかった」という事態を防ぐため、口頭のみならず書面(提供時のカバーレターや注記)での明示が実務上推奨される。
誤りやすい点として、「ガイドライン全体を渡したのだから医師が自分で判断するはず」という考え方がある。医師がガイドラインを読み解く能力を持っていたとしても、国内承認状況と海外ガイドラインの記述の乖離を企業側が事前に伝える義務は免除されない。また、ガイドラインの一部ページのみをコピーして提供する場合、切り取りによってネガティブ情報が脱落していないかを確認する必要がある(留意事項(7)、恣意的な選択の禁止)。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q10
Q11 公表済み使用成績調査結果に未承認用法が含まれる場合の提供可否
(5)他の目的で情報提供する資料に未承認薬・適応外薬等に関する使用情報が含まれる場合
Q(質問)
医師又は薬剤師から使用成績調査の結果に関する情報を求められた場合で、既に自社が公表している使用成績調査の結果に国内では認められていない用法・用量に関する情報が含まれているときは、当該使用成績調査の結果に関する情報を提供することが可能か。
A(厚生労働省の回答)
法令に基づき行った報告(安全性定期報告)の内容には、承認を受けていない用法・用量等に関する情報が含まれることを明確に伝えた上で、当該報告の内容を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(6)、(7)
So what(意味すること): 法令に基づく安全性定期報告(使用成績調査を含む)は、未承認の用法・用量情報が含まれることを明示した上で提供できる。ただし安全性関連留意事項(6)への準拠も必要であり、安全性情報の省略は不可。
So why(なぜそう定めるか): 法令報告は企業が義務的に作成した客観的文書であり、その提供は科学的・客観的根拠の要件を満たしやすい。一方、未承認情報の混在を明示する義務は医療者による適切な情報評価のために設けられている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
安全性定期報告や使用成績調査報告書は、薬事法令に基づいて企業が規制当局に提出する義務報告書であり、その内容は現実の医薬品使用実態を反映している。承認外用法・用量での使用が実態として存在する場合、その情報が法令報告に含まれるのは自然な帰結である。Q11は、この法令報告の内容を医療関係者に提供することを、未承認情報の含有を明示した上で許容している。
典型的な場面は、企業が既に公表している安全性定期報告に添付文書外の用量での有害事象情報が記録されており、その安全性情報について担当医師から問い合わせがあるケースである。この場合、当該用量が承認外であることを明示した上で、法令報告全体または関係する部分を提供できる。なお、法令に基づく報告であることを示すことで、科学的・客観的根拠の要件を満たしやすくなる側面がある。
誤りやすいのは、安全性定期報告の中から有効性データの部分のみを抜粋して提供し、同報告に含まれる安全性情報(有害事象・副作用等)を省略するケースである。留意事項(6)が示すとおり、安全性情報の省略は許されず、有効性・安全性をバランスよく提供することが求められる。また、法令報告の一部を切り取って提供する場合、文脈から切り離されることで情報が誤解される恐れがないかの確認も必要である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q11
Q12 適応外情報を含む査読付き原著論文の提供可否
(5)他の目的で情報提供する資料に未承認薬・適応外薬等に関する使用情報が含まれる場合
Q(質問)
医師又は薬剤師から査読付き原著論文に関する情報を求められた場合で、当該論文に適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報が含まれているときは、当該査読付き原著論文を提供することが可能か。
A(厚生労働省の回答)
当該論文に承認を受けていない効能・効果、用法・用量等に関する情報が含まれていることを明確に伝え、当該論文を本ガイドラインの条件に従って提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(5)、(7)
So what(意味すること): 適応外情報を含む査読論文を提供すること自体は可能だが、未承認効能・用法が含まれることを明示することが必須。さらに論文を恣意的に選択せず(留意事項(5))、ネガティブ論文も含める必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 査読論文は科学的評価を経た信頼性の高い資料だが、都合の良いものだけを選んで提供することを防ぐため、論文選択の恣意性を排除する留意事項(5)の遵守が求められている。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
査読付き原著論文は編集委員会による科学的審査を経た一次資料として、治療上の判断を裏付ける根拠として医師が最も重視する文書形式の一つである。Q1でも科学的根拠の目安として列挙されているように、査読論文はエビデンスとしての信頼性が高い。しかし企業が特定の論文だけを選択的に提供し、反証する論文を隠すことで医師の判断を誘導する「cherry picking」のリスクが内在しており、Q12は留意事項(5)(恣意的選択の禁止)の遵守を特に求めている。
典型的な場面は、医師が「この用量での効果について最新のエビデンスを教えてほしい」と求め、企業が関連する査読論文を検索・整理して提供するケースである。この際、有効性を支持する論文とネガティブな結果を報告した論文の両方を含め、かつ提供前に「国内未承認の効能・用法情報が含まれること」を口頭または書面で明示することが必要となる。論文の選択基準についても、特定の結果を強調するような意図的な絞り込みを行っていないことを説明できる状態が望ましい。
誤りやすい境界線は、「医師が求めた論文だけを提供しているのだから恣意的ではない」という理解である。医師が「A誌の○○論文を見せてほしい」と特定した場合は問題ないが、「この用法のエビデンスを知りたい」という包括的な求めに対し企業が論文を選んで提供する場合は、選択プロセスに恣意性がないことを確保する必要がある。また、論文提供と同時に営業担当者が追加の口頭説明を行う場面では、説明内容が「販売情報提供活動」と混合しないよう切り分けることも求められる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q12
Q13 医師・薬剤師の関心分野を把握した場合の自発的情報提供の可否
(6)医療関係者から求めがあった場合
Q(質問)
医師又は薬剤師と面談した際に医師又は薬剤師の関心が高い分野が判明したので、医師又は薬剤師から求めがなくても、当該分野に関する未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を提供してよいか。
A(厚生労働省の回答)
医師又は薬剤師からの求めがなければ、未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供は認められない。
特に留意すべき項目:(2)、(3)
So what(意味すること): 医師・薬剤師の興味関心を把握していても、その場で直接の「求め」がない限り未承認・適応外情報を提供することは禁止。面談後のフォローアップメールや資料送付も含め、自発的な提供は一切不可。
So why(なぜそう定めるか): 「医療関係者からの求め」は未承認情報提供の必要条件であり、企業側の判断で提供対象を広げることを防ぐことで、販売促進活動との混同を防止している。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
未承認・適応外情報の提供を「医療関係者からの求め」に限定する原則は、ガイドライン第4の3の根幹である。企業が医師・薬剤師の関心分野を把握した上でその分野の未承認情報を先回りして提供することは、実態として販売促進活動と区別できなくなる。「関心がある=使いたい」という解釈の下で情報を積極的に持ち込む行為は、医療関係者の自律的な情報収集を誘導するものであり、ガイドラインが排除しようとした企業主導の情報発信に当たる。
典型的な違反パターンは、面談中に医師が「最近この疾患の患者が増えている」と言及したことを契機に、次回訪問時にその疾患の適応外使用に関する論文をまとめた資料を「参考になると思いまして」として持参するケースである。医師が当日その資料を求めておらず、かつ企業が面談を通じてニーズを推察して準備したものである以上、これは求めのない自発的提供に当たる。電子メールでの資料送付、郵送、デジタルコンテンツの共有なども同様に不可である。
誤解されやすい点として、「面談中に医師が関心を示したのだから、その場で資料を取り出して提供してよい」という解釈がある。これは許されるか否かが「その面談中に医師が明示的に求めたか」にかかっている。関心を示すことと情報提供を求めることは異なり、前者から後者を推測して自発的に資料を提供することは不可である。また、「以前提供した資料に関連する補足情報」として未承認情報を後追いで送付する行為も、求めのない提供として禁止される。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q13
Q14 一人の医師への提供情報を求めていない他の医師・薬剤師に横展開する可否
(6)医療関係者から求めがあった場合
Q(質問)
医師又は薬剤師から未承認・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を求められ、本ガイドラインに従って査読付き原著論文を提供する場合、求めにより提供した情報と同じ情報であれば、企業に情報提供の求めをしていない他の医師又は薬剤師に提供してよいか。
A(厚生労働省の回答)
医師又は薬剤師からの求めがなければ、未承認・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供は認められない。
特に留意すべき項目:(2)、(3)
So what(意味すること): あるHCPへの提供実績があっても、同じ資料を他のHCPに自発的に配布することは禁止。「同じ情報だから問題ない」という論理は通用しない。他のHCPへの提供はその都度、個別の求めが必要。
So why(なぜそう定めるか): 許容されるのはあくまでも「個別の求め」への対応であり、情報の同一性は横展開の正当化理由にならない。自発的な配布は実質的に販売促進と区別できなくなるため禁止される。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
「個別の求め」という要件は、特定の医師・薬剤師が特定のタイミングに特定の情報を求めたことへの対応として機能する。ある医師への回答実績があるからといって、同内容の情報を他の医師へ横展開することは、各個人の求めがない以上、実質的には自社判断による能動的な情報配信となる。これが積み重なれば、結果的に企業が未承認情報を組織的に配布することと変わらない状態になり、ガイドラインの趣旨を骨抜きにする。
典型的な場面は、病棟での面談後に「他の先生にも同じ情報を渡してほしい」という依頼を受けるケースや、医局説明会で複数の医師に同じ論文を配布しようとするケースである。前者では依頼元の医師に求める意思があっても、他の医師に求めがなければ提供できない。後者でも、その場で各医師から個別に求めがあった場合を除き、論文を一律配布することは認められない。
誤解されやすい点は、「同じ情報だから問題ない」「どうせ医師同士で情報共有されるだろう」という論理である。どちらも提供の要件を満たさない。情報の同一性は横展開の許可要件とならない。また、「A医師が求めたのでB医師にも提供可能と判断した」という解釈も認められない。個別の求めは1件ずつ独立して成立するものであり、ある医師への対応が他の医師への対応の根拠にはならない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q14
Q15 使用経験のある医師への無求めの適応外情報提供の可否
(6)医療関係者から求めがあった場合
Q(質問)
適応外薬又は国内では認められていない用法・用量での医薬品の使用経験を有している医師に対し、当該医師から情報提供の求めがない場合に、適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を提供してよいか。
A(厚生労働省の回答)
医師からの求めがなければ、適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供は認められない。
特に留意すべき項目:(3)
So what(意味すること): 医師が過去に当該適応外薬を使用した経験があっても、求めがない限り企業側から情報提供を開始することは禁止される。
So why(なぜそう定めるか): 使用経験の有無は求めの代替にならない。求めの原則(項目3)は例外なく適用される。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は「使用経験のある医師なら求めなくても情報提供してよいのではないか」という現場の素朴な疑問に応えている。答えは明確に否である。ガイドラインは未承認薬・適応外薬に関する情報提供を「医療関係者からの求め」を絶対条件としており、その条件は医師の属性や過去の行動によって緩和されない。使用経験の有無は、あくまで医師側の個人的な履歴であり、それをもって「求め」の代替とみなすことはできない。
典型的な場面として、ある診療科の医師が特定の疾患領域で適応外薬を継続的に使用していることを担当MRが把握しており、「どうせ使っているのだから新しいエビデンスを届けよう」と思案するケースが挙げられる。こうした状況でも、医師本人から具体的な情報提供の求めがない限り、企業側から承認外情報を積極的に提供することは禁止される。
誤りやすい境界線として、面談中に医師が「先生の病院ではこの薬をこの疾患に使っていると聞いています」と営業担当が切り出した場合、それ自体がすでに規制対象の働きかけとなりうる。使用経験があるとの情報は、企業が承認外情報提供の「合理的根拠」として援用できるものではなく、使用の事実を把握した上でのアプローチは、むしろ求めを誘導する行為として問題視される可能性がある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q15
Q16 面談中に医師・薬剤師から求めがあった場合の情報提供
(7)医療関係者と面談中に求めがあった場合
Q(質問)
疾病の治療方法について医師又は薬剤師と議論しているときに、当該医師又は薬剤師から未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
企業として本ガイドラインに適合し情報提供可能と判断した情報を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
ただし、問の状況における医師又は薬剤師との議論が、販売情報提供活動の一連の流れの中で行われている場合は、未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供については、販売情報提供活動と切り分けて行う必要がある。
特に留意すべき項目:(1)
So what(意味すること): 治療方法の議論中に医師・薬剤師から求められれば情報提供は可能だが、販売活動の流れの中での議論の場合は承認外情報の提供を販売活動と明確に区分して行う必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 承認外情報は販売促進と混同されるリスクがあるため、文脈の切り分けが求められる(項目1)。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
治療方法に関する議論の最中に医師・薬剤師から承認外情報の求めが生じるという状況は、日常的な面談で頻繁に発生する。本問の重要なポイントは「求めがあれば提供できる」という原則を確認しつつ、「販売情報提供活動の流れの中で行われている場合は切り分けが必要」という条件を明確にしたことにある。
面談がMR訪問としての販売活動の一環として行われている場合、そこで生じた承認外情報の提供は、承認済み製品のプロモーション活動と地続きになってしまう。この場合、口頭で「ここからは承認外情報についてのご質問への対応です」と宣言したうえで提供するか、あるいは別の機会(医療情報担当者による対応、薬相談窓口への誘導等)として切り分けることが必要になる。
誤りやすい点は、「医師から自発的に質問が出たのだから問題ないはず」と切り分けの手続きを省略するケースである。求めの有無だけで合法性が決まるわけではなく、販売活動の文脈の中に承認外情報が混在することで、医師に対して特定の適応外使用が推奨されているかのような印象を与えてしまうリスクが残る。切り分けの手続きは、情報の内容ではなく提供行為の文脈を正しく管理するためのものである。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q16
Q17 医師・薬剤師が出席する社内会議での未承認薬データ使用
(8)医療関係者に意見聴取する場合
Q(質問)
企業の医薬品の開発に関する助言提供について契約を締結した医師又は薬剤師が出席する、医薬品の国内開発検討のための社内会議において、未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する海外治験データを使用して検討を行うことは可能か。
A(厚生労働省の回答)
問の状況において、検討を行うことは差し支えない。
特に留意すべき項目:(1)
So what(意味すること): 開発助言契約を締結した医師・薬剤師が出席する社内会議であれば、海外治験データを含む未承認情報を用いた検討は認められる。
So why(なぜそう定めるか): 助言提供を目的とした契約に基づく場で行われる情報提供は販売情報提供活動に該当しないため(項目1)。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は、企業が医薬品の国内開発を検討する際に、外部の医療関係者の専門的意見を取り入れるプロセスを規制上どう位置づけるかを明確にする。助言提供に関する契約を締結した医師・薬剤師が参加する社内会議での情報共有は、販売情報提供活動には該当せず、未承認の海外治験データを用いた検討も認められる。
典型的な活用場面は、グローバル試験で有効性が確認された候補品について国内第Ⅱ相または第Ⅲ相試験の設計を検討する際、当該領域の専門医の意見を社内開発会議に取り込むケースである。このとき共有される海外の未承認試験データや副作用情報は、開発上の意思決定を支援するものであり、特定の適応外使用を医師に促す目的はない。
誤りやすい点は、契約の存在とその内容の適切さである。助言提供の契約が形式的なものに留まっており、実態が「未承認情報を届けるための名目」となっている場合は、販売情報提供活動の脱法的迂回と判断されるリスクがある。契約は実際の助言業務(プロトコル設計への意見、患者集団の特性に関する知見の提供等)を目的とし、報酬も業務の実態に対応したものであることが必要である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q17
Q18 学術誌共著のための医療関係者への未承認情報提供
(8)医療関係者に意見聴取する場合
Q(質問)
企業の研究者が学術誌で公表する論文を医療関係者と共著するため、医師又は薬剤師に対し、未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報を提供することは可能か。
A(厚生労働省の回答)
問の状況において、情報提供することは差し支えない。ただし、臨床研究法等の関係法令や遵守すべき指針等に従う必要がある。
特に留意すべき項目:(1)
So what(意味すること): 学術論文の共著を目的とした医師・薬剤師への承認外情報提供は可能だが、臨床研究法などの関係法令・指針の遵守が前提となる。
So why(なぜそう定めるか): 共著を目的とする学術的活動は販売情報提供活動とは区別されるが(項目1)、法令遵守は別途求められる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
企業の研究者が医療関係者と共著で学術論文を執筆するために承認外情報を共有することは、販売情報提供活動とは区別された学術活動として認められる。ただし、臨床研究法をはじめとする関係法令や指針に従うことが前提となり、この条件が明示されている点は重要である。
典型的な共著場面は、企業の研究者(メディカルアフェアーズ部門等)が主導して試験データを学術誌向けに分析・執筆する際、臨床現場での知見を有する医師・薬剤師を共著者として参画させるケースである。このプロセスでは、未公表の試験データやポジティブ・ネガティブ両面の解析結果を共有することが不可欠であり、それが認められている。
誤りやすい境界線は二つある。第一に、共著の形式を取りながら実態が企業主導のプロモーションを学術論文に見せかける行為(ゴーストライティング等)は、臨床研究法や医薬品業界の自主規制規範で厳しく問題視される。第二に、共著とは無関係の医師に対してその論文の内容を根拠として適応外使用を促す情報提供を行うことは、別途、求めの原則の適用を受ける。共著目的の情報共有の許容性は、その具体的な協働の枠を超えて無条件に広がるものではない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q18
Q19 薬相談窓口への電話での口頭情報提供時の留意点
(9)口頭での情報提供
Q(質問)
本ガイドラインにおいて、「情報提供にあたっては、要約、省略、強調等を行わないこと」とされているところ、企業の薬相談窓口に、電話で、医師又は薬剤師から適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報提供の求めがあった場合、情報提供に際してどのようなことに留意すべきか。
A(厚生労働省の回答)
問の状況における情報提供にあたっては、効能・効果、用法・用量等の有効性に関する情報のみならず、副作用など安全性に関する情報も提供するなど、有効性及び安全性に関する情報を適切に提供する必要があることに留意すべきである。
特に、単に時間が限られているという理由で、安全性に関する情報の提供を省略してはならないことに留意し、そのような場合には、他の情報提供の方法も検討する必要がある。
特に留意すべき項目:(4)、(6)
So what(意味すること): 電話での口頭回答であっても有効性情報だけでなく副作用等の安全性情報を必ず伝える必要があり、時間不足を理由に安全性情報を省略することは禁止される。時間が足りない場合は別の方法(書面送付等)を検討する。
So why(なぜそう定めるか): 要約・省略・強調を禁じるガイドライン原則(項目4・6)は媒体を問わず適用され、電話という時間制約はその免除理由にならない。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
薬相談窓口への電話は、医療関係者が承認外情報の求めを行う代表的なチャネルの一つである。本問が問いかけるのは、「要約・省略・強調を行わないこと」というガイドラインの原則が、口頭・電話という媒体においてどのように担保されるかという問題である。結論として、有効性情報だけでなく副作用等の安全性情報も必ず伝えること、時間不足を理由に安全性情報を省略することは禁じられること、の二点が示されている。
電話対応で特に生じやすい場面は、医師・薬剤師が「この患者に〇〇の適応外使用は効くか」と短時間で聞いてくるケースである。担当者が有効性に関するエビデンスの概要だけを手短に回答してしまうと、副作用プロファイルや注意が必要な患者背景に関する情報が抜け落ちる。このような対応はガイドラインの「省略禁止」に抵触する。
実務上の対処策として、電話で完結できない場合は「詳細な情報を書面で後日送付する」「改めて時間を確保した電話でご説明する」という選択肢を積極的に提示することが求められる。特に注意が必要なのは、医師側が「とにかく今すぐ教えてほしい」と求めるケースであっても、安全性情報の伝達を省略したまま回答することは認められないという点である。担当者は電話の流れに引きずられず、情報の完全性を守る義務を持つ。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q19
Q20 情報提供の場に別の医師・薬剤師が同席した場合の対応
(10)複数の医療関係者への情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報提供を求められ、本ガイドラインに従って情報提供している場所に、別の医師又は薬剤師が自分も情報提供を受けたいと同席した場合、情報提供が可能か。
A(厚生労働省の回答)
自分も情報提供を受けたいとして同席した医師又は薬剤師に対しても、その求めに応じて本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(3)
So what(意味すること): 情報提供中に別の医師・薬剤師が「自分も聞きたい」と同席を希望した場合、その求めに応じる形であれば同様の情報提供が可能。
So why(なぜそう定めるか): 同席者からの求めが成立していれば求めの原則(項目3)を満たすため、人数が増えても情報提供は適法となる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は、一対一で開始した情報提供の場に第三者が加わってきた場合に、その第三者にも同一の承認外情報を提供できるかを問う。答えは「求めに応じて」であれば可能、という内容であり、求めの原則が人数の問題でなく「各自の求め」の問題であることを示している。
典型的な場面は、医師Aの求めに応じて担当者が適応外情報を説明していたところ、同じ診療科の医師Bが「私も聞かせてほしい」と同席を申し出たケースである。この時点で医師Bからの求めが成立するため、医師Bに対して同様の情報提供を行うことは問題ない。
誤りやすい点は、同席者が「聞いていた」だけで明示的な求めを表明していない場合の扱いである。単に同席していた、あるいは自然と聞こえてしまった、という状況では求めが成立しているとは言えない。また、複数人への一斉情報提供が「求めなき提供」に近い形になっていないかにも注意が必要であり、Q21(医局説明会での一括回答)の問題とも通じる。同席の求めは受動的な「聞こえてしまった」ではなく、能動的な「自分も提供を受けたい」という意思表示である必要がある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q20
Q21 医局説明会で質問医師以外の多数の医師の前で回答する可否
(10)複数の医療関係者への情報提供
Q(質問)
多数の医師が参加している医薬品に関する医局説明会において、参加医師から当該医薬品の国内では承認されていない海外における効能・効果、用法・用量等に関する質問を受けた場合、質問を受けた医師以外の多数の医師の前で回答して差し支えないか。
A(厚生労働省の回答)
本ガイドラインの条件に従って情報提供(回答)することは差し支えない。
ただし、質問の内容によっては、その場では最小限の情報提供にとどめ、別の機会に質問者に対して個別に対応する方法を検討することも考慮するべきである。
特に留意すべき項目:(2)
So what(意味すること): 医局説明会中に出た質問に対し、多数の医師の前で承認外情報を回答することはガイドライン条件下で可能。ただし質問内容によっては当日は最小限の応答にとどめ、後日個別対応を検討すべき場合がある。
So why(なぜそう定めるか): 公的な場での一括回答が偏った印象を与えないよう均衡のとれた情報提供(項目2)が求められ、状況によっては個別対応が適切となる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問の舞台は医局説明会という集団的な場であり、Q20の「同席者」問題をより大規模かつ公式な文脈に展開したものである。ガイドラインは、質問者以外の多数の医師の前での回答を条件付きで認めるが、「質問の内容によっては個別対応を検討するべき」という留保を設けている点が実務上の重要なポイントである。
医局説明会での典型的な問いは、出席医師の一人が「この薬は海外では〇〇にも使われているそうだが、そのエビデンスは」と質問するケースである。この場合、ガイドライン条件を満たした上で会場全体に回答することは可能だが、提供できる情報量や複雑さ、安全性情報の十分な伝達の観点から、その場での詳細な回答が困難な場合は最小限の応答にとどめて後日個別に対応することが推奨される。
複数医師への一括回答が問題になりやすいのは、一方的な情報伝達になりやすく、個々の医師のニーズや患者背景に合わせた情報調整ができないためである。また、承認外情報の回答が場の流れの中でプロモーションの延長と見なされないよう、承認外であることの明示と販売活動との切り分けを会場の前で明確に行うことも必要である。公平性(項目2)の観点からは、出席者全員が均衡のとれた情報を受け取れる状況かどうかを担当者が判断する責任を負う。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q21
Q22 求めた医師・薬剤師が不在時に同一医局・薬局の別の者へ情報提供する可否
(10)複数の医療関係者への情報提供
Q(質問)
病院の医局又は薬局の医師又は薬剤師から未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報提供を求められ、情報提供を求めた医師又は薬剤師が外出中で不在である場合に、同一医局又は薬局の他の医師又は薬剤師に対して当該情報を提供するよう依頼されたときは、当該他の医師又は薬剤師に対して情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
ただし、この場合、情報提供を求めた医師又は薬剤師と情報提供対象の医師又は薬剤師が、当該情報提供を受けることについて連携していることを確認することなどに注意が必要である。
特に留意すべき項目:(2)、(3)
So what(意味すること): 求めた医師・薬剤師の不在時に同一医局・薬局の別の者へ情報提供することはガイドライン条件下で可能だが、求めた者と受け取る者の間で情報提供を受けることについて連携が取れているかを事前に確認する必要がある。
So why(なぜそう定めるか): 求めの原則(項目3)および公平性(項目2)を維持するため、代替受領者が求めた者の意図と連携していることの確認が必須となる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は「代理受領」という状況、すなわち情報を求めた本人が不在であり、同じ医局・薬局の別の者に届けてほしいと依頼されるケースを扱う。回答は「差し支えない」だが、「求めた者と受け取る者の連携確認」という条件が付されている点が実務の核心である。
典型的な場面は、入院病棟の医局担当者から「自分が不在の午後に資料が届く場合は同僚の医師に渡してもらってよい」と事前に言われているケースや、薬局の主任薬剤師が求めた情報を後輩薬剤師に受け取ってもらうよう依頼しているケースである。いずれも、求めた者と実際の受領者の間に事前の連携・委任がある点が許容の根拠となる。
誤りやすいのは、担当MRの判断で「この医局の別の先生にも渡しておこう」と独自に対象者を拡大するケースである。受領者が求めた者の意思のもとで受け取るのではなく、MRが自発的に受領者を選定した場合は、受領者本人からの求めも存在せず、求めた者との連携確認も取れていないため、規制上の問題となる。「連携の確認」は書面でなくとも構わないが、口頭でも事前に確認できている必要があり、事後確認では不十分である。
出典: 厚労省 販売情報提供活動G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q22
Q23 学会展示ブースでの適応外情報の求めに応じた提供
(11)講演会、学会等における情報提供
Q(質問)
学会会場の展示ブースで、医師又は薬剤師から適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供を求められた場合、情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
企業として本ガイドラインに適合し情報提供可能と判断した情報を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。
ただし、通常、学会会場の展示ブースにおける情報提供は販売情報提供活動の一環として行われていると考えられることから、問の状況においては、承認を受けていない効能・効果、用法・用量等に関する情報であることを明示し、より丁寧に、販売情報提供活動と切り分けて情報提供をすることが必要である。
特に留意すべき項目:(1)、(3)、(7)
So what(意味すること): 学会ブースでの適応外情報提供は可能だが、ブースが通常は販売情報提供活動の場と見なされるため、「これは承認外の情報である」と明示したうえで、プロモーション活動と明確に区分して提供する必要がある。
So why(なぜそう定めるか): ブースの文脈が販売促進と同一視されやすく、未承認情報との混同を防ぐため、明示と区分という追加の手続き(項目1・3・7)が義務付けられる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
学会の展示ブースは企業にとって製品の認知向上を図る重要な場であり、ブース全体が販売情報提供活動の文脈に置かれている。本問はその文脈の中で承認外情報の求めに応じることの適法性を確認しつつ、「明示」と「切り分け」という追加の手続きが必要であることを明確にしている。
典型的な場面は、ブースで承認済み製品の説明をしていた担当者に対し、来訪した医師から「この薬は〇〇には使えないのか」と適応外に関する質問が出るケースである。この場合、企業として対応可能と判断した情報であれば回答できるが、「これは国内未承認の情報です」と口頭または書面で明示し、プロモーションの流れから明確に分離して対応する必要がある。
実務上の誤りとして多いのは、ブースのプロモーション資材に適応外情報が掲載されていたり、プロモーションの流れの中で承認外情報が自然に含まれてしまうケースである。また、複数の来場者が聞き耳を立てている環境では、Q20・Q21の複数人問題が同時に生じる可能性がある。学会ブースでの適応外対応は、ブースとは別の小スペースを使う、担当者を分ける、書面で対応する等、空間・担当者・資材の物理的な切り分けも有効な実務対応である。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q23
Q24 海外グループ会社主催の講演会に日本の医師が独自参加する場合の日本企業の情報提供該当性
(11)講演会、学会等における情報提供
Q(質問)
日本企業のグループ会社である海外の現地企業主催の講演会で、海外において承認されている情報であって未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報が提供される場合、日本から医師又は薬剤師が日本企業による働きかけ等によらず当該講演会に参加するときは、当該日本企業による未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する情報の提供に当たるか。
A(厚生労働省の回答)
当たらない。
特に留意すべき項目:(1)
So what(意味すること): 海外グループ会社が主催する講演会に日本の医師・薬剤師が日本企業の働きかけなく自主的に参加する場合、そこで提供される承認外情報は日本企業による情報提供には該当しない。
So why(なぜそう定めるか): 日本企業が積極的に関与・誘導していない自発的参加であれば、その場の情報提供活動は日本企業の行為とみなされない(項目1)。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は国際的な企業グループの文脈で生じるグレーゾーンを整理する。日本の親会社の関係会社にあたる海外企業が主催する講演会に、日本の医師・薬剤師が自主的に参加した場合、そこで提供される未承認情報が日本の親会社の「情報提供行為」に当たるかという問いである。答えは否であり、日本企業の積極的な関与・働きかけが存在しないことが条件となる。
典型的な場面として、ある国際学会に合わせて海外現地法人が自国の承認情報に基づく製品講演を開催し、学会参加中の日本の医師がその講演に立ち寄るケースが考えられる。その際、日本法人が医師に対してその講演への参加を勧誘・案内・費用負担等の形で誘導していなければ、その場の情報は日本企業の提供行為とはみなされない。
誤りやすい境界として、「働きかけ等によらず」という要件が厳格に解釈される点がある。たとえば、日本法人の担当者が医師に対してその海外講演の日時・会場情報を共有する、参加を「勧める」ニュアンスのコミュニケーションをとる、あるいはその講演への参加を前提とした旅費や宿泊費を負担するような場合は、積極的な働きかけが認められるため、日本企業の情報提供行為として規制の対象になりうる。形式上は自主参加でも実質的な誘導が伴えば適用除外にはならない。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q24
Q25 MA部門従業員が学会で治験データを発表する可否
(12)従業員の学会活動
Q(質問)
未承認薬・適応外薬又は国内では認められていない用法・用量に関する治験データについて、企業のメディカル・アフェアーズ(MA)の従業員が学会発表することは可能か。
A(厚生労働省の回答)
企業の従業員が、自社主催又は共催でない学会の発表の場において、学会からの求めに応じ、本ガイドラインの条件に従って治験データについて発表することは差し支えない。
特に留意すべき項目:(2)、(3)、(7)
So what(意味すること): MAの従業員が承認外薬の治験データを学会で発表することは、自社主催・共催でない学会において学会からの求めに応じた形であれば可能。
So why(なぜそう定めるか): 学会からの求めに応じた発表は販売情報提供活動と切り離された学術活動と位置付けられ、ガイドライン条件(項目2・3・7)を満たす限り認められる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問は製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門の従業員が、自社製品に関する未承認薬・適応外薬の治験データを学会発表する場合の規制上の位置づけを明確にする。結論として、自社主催・共催でない学会において学会からの求めに応じた発表であれば認められる。
典型的な場面は、MA部門の従業員が第三者主催の国内外の学術学会でポスター発表や口頭発表を行う場合である。この場合、学会が演者として招聘・指名したか、あるいは演題が学術的な審査を経て採択されたかが「学会からの求め」の実質的な根拠となる。治験データの発表は科学的情報の普及を目的とした学術活動であり、販売活動とは本来的に区別される。
誤りやすいのは「自社主催・共催でない」という条件の境界である。たとえば、企業が資金提供・スポンサーとして主催に関与している講演会やシンポジウムでのMA従業員による発表は、自社主催・共催に類似すると判断される可能性がある。また、学会から求められたという事実は記録上確認可能であることが望ましく、担当者個人の判断で「学術的な場だから」と発表テーマを設定することは、求めの成立要件を満たさない。発表内容における均衡(項目2)や資材の承認(項目7)の観点からも、社内審査プロセスを経た上で発表に臨む必要がある。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q25
Q26 後発品が承認を有しない「虫食い効能」に関する情報提供
(13)いわゆる虫食い効能の情報提供
Q(質問)
医師又は薬剤師から、先発医薬品は承認を有しているが、再審査期間、特許等の理由で後発医薬品が承認を有していない効能・効果、用法・用量等に関する情報の提供を、当該後発医薬品の製造販売業者が求められた場合、当該後発医薬品の製造販売業者は、先発医薬品のみが承認を有している効能・効果、用法・用量等に関する情報を提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
先発医薬品が承認を有する効能・効果、用法・用量等について、当該後発医薬品が承認を有していない事実を情報提供することは差し支えない。
ただし、先発医薬品のみが承認を有している効能・効果、用法・用量等について情報提供することは認められない。
特に留意すべき項目:(1)、(4)、(6)、(7)
So what(意味すること): 後発品メーカーは「その効能については先発品のみが承認を持っており後発品は未承認である」という事実の告知は可能。ただし、未承認の効能・効果の内容そのものを説明・提供することは禁止される。
So why(なぜそう定めるか): 未承認の内容を情報提供することは後発品の適応外使用を促すことになり、ガイドラインの原則(項目1・4・6・7)に反するため、事実の告知と内容の提供は区別される。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
「虫食い効能」とは、先発医薬品が取得している効能・効果や用法・用量の一部を後発医薬品が再審査期間や特許の存続などの理由で承認されていない状態を指す。後発品メーカーにとっては、処方する医師・薬剤師が先発品と後発品の適応範囲の違いを知らずに投与するリスクがあることから、何らかの情報提供が必要になる場面がある。本問は、その情報提供をどこまで行えるかの限界線を示す。
認められる情報提供は、「この効能については先発品は承認を持っているが、弊社後発品は承認を有していません」という事実の告知に限られる。たとえば、添付文書の効能欄を用いてどの適応が後発品では適応外であるかを医師に説明することは、虫食いの事実を知らせる行為として認められる。
禁じられるのは、先発品のみが承認を持つ効能の内容そのものに踏み込んだ情報提供である。たとえば「先発品では〇〇の効能を持っており、エビデンスはこれです」と提供することは、自社後発品が承認を持たない適応外情報を実質的に提供していることになり、禁止される。実務上特に注意が必要なのは、虫食い効能に関して医師から詳しく聞かれた際に「詳細は先発品のMRに問い合わせてください」と誘導する形を取ることは問題ないが、企業自らが未承認の効能を説明してしまうことは許されない。事実の告知と効能の説明を常に区別した対応が求められる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q26
Q27 患者団体から未承認薬・効能追加の治験情報を求められた場合の提供範囲
(14)患者に対する情報提供
Q(質問)
患者団体から未承認薬や効能追加に関する開発の状況に関する情報(治験情報)を求められた場合、どのような情報であれば情報提供可能か。
A(厚生労働省の回答)
例えば、厚生労働省ホームページにおいて「国内での治験・臨床研究の情報」として紹介されているサイト(大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)、(一財)日本医薬情報センター(JAPIC)、(公社)日本医師会治験促進センター(JMACCT))の情報、臨床研究法に基づき公開されている医療機関等で実施される臨床研究(臨床研究実施計画・研究概要公開システム:JRCT)の情報、PMDAホームページで公開されている主たる治験及び人道的見地から実施される治験(拡大治験)の情報、ClinicalTrials.gov(※)の情報等を、本ガイドラインの条件に従って情報提供することは差し支えない。 (※)https://www.clinicaltrials.gov/
特に留意すべき項目:(4)、(7)
So what(意味すること): 患者団体には、UMIN・JAPIC・JMACCT・JRCT・PMDA・ClinicalTrials.gov など公的機関が公開する治験・臨床研究情報の案内をガイドライン条件に従って提供できる。未公開の社内データや独自の臨床成績を患者団体に提供することは想定されていない。
So why(なぜそう定めるか): 公的機関が開示している情報に限定することで、偏った情報による患者の誘導を防ぎ、情報の公正性(項目4・7)を確保できる。
解説 ── 背景・適用場面・実務上の注意
本問はQ6(医師・薬剤師からの治験情報の求め)と平仄をあわせつつ、対象を「患者団体」に拡張した問いである。患者団体は医療関係者ではなく、ガイドラインの主な対象は医療関係者への情報提供であることを踏まえると、この設問は患者や市民に対する情報提供の範囲をどこまで認めるかの限界線を示す重要な問いといえる。
提供が認められるのは、公的機関が公開済みのデータベース情報(UMIN、JAPIC、JMACCT、JRCT、PMDA、ClinicalTrials.gov等)に限られる。患者団体が「未承認薬の開発が進んでいるか知りたい」と求めた場合、これら公的な治験登録情報の案内をガイドライン条件に従って提供することは可能であり、未公開の社内データや自社の開発戦略・臨床成績を提供することは想定されていない。
実務上の誤りとして多いのは、患者団体との関係性の中で「患者の期待に応えたい」という動機から、未公開の開発状況や非公開の試験データを共有してしまうケースである。患者団体は疾患啓発・政策提言等の社会的な役割を担っており、企業側も協力関係を築きやすい相手ではあるが、情報提供の範囲は医療関係者とは異なり、公開情報に限定されるという規制上の区別を厳格に守る必要がある。また、患者団体経由で患者個人に情報が伝わる可能性もあるため、公平性・完全性(項目4・7)の観点での慎重な対応が求められる。
出典: 厚労省 販提G Q&A(その2) 事務連絡 平成31年3月29日 Q27